『竜馬がゆく』を読了しました。久しぶりに本の世界に没入した贅沢な読書体験でした。やっぱり小説って感情が揺さぶられるのがいいですね。
ユヴァル・ノア・ハラリはゴルバチョフのことを「自ら巨大な権力を手放した」という点で評価していますが、本書で司馬遼太郎が描く徳川慶喜の大政奉還も見事で、そこに竜馬が感動するシーンがとくに印象的でした。
薩長同盟と大政奉還という大仕事を成し遂げた竜馬ですが、その愛嬌と取材能力について書かれた以下の文章も心に残りました。
「この若者は、物おじせずひとの家の客間に入りこむ名人といってよかった。相手もまた、この若者に惹かれた。ひかれて、なんとかこの若者を育てたいと思い、知っているかぎりのことを話そうという衝動にかられた。
幕臣の勝海舟もそうだし、大久保一翁もそうだった。熊本にすむけたはずれに合理主義的な政治思想家の横井小楠もそうだったし、越前福井藩の松平春嶽もそうだった。かれらは、
『竜馬愛すべし』
といって、さまざまなことを教えた。竜馬には、それをさせる独特の愛嬌があった。どんな無口な男でも、坂本竜馬という訪客の前では情熱的な雄弁家になる、といわれていた。
ことばをかえていえば竜馬は、異常な取材能力をもっていたといっていい。これが特技であった。自然、かれはいわゆる志士のなかでは抜群の国際外交通であった。」
