スティーブン・コヴィーさんが書いた『第3の案』を再読したところ、やっぱり素晴らしい本でした。
この本は、コヴィーさんの代表作『7つの習慣』における第6の習慣「相乗効果を発揮する」を深掘りしたものです。
自分の考え(第1案)と、相手の考え(第2案)が異なるとき、どちらかが相手に合わせるのでもなく、両者が譲歩して妥協点(第1案・第2案より劣る案)に落ち着くのでもなく、「相乗効果を発揮して、自分も相手も一人では考えもしなかった、素晴らしい第3の案を見出す」という視点が大切だという話です。
この本では、第3の案を志向して現実を変えていった様々な人たちの事例が紹介されています。家庭や職場などの身近な話から、南アフリカの人種隔離政策を撤廃に導いたマンデラ元大統領の事例など、社会を変革するような大きな話まで盛り込まれており、読んでいて心を揺さぶられる場面が多くありました。
今回この本をパラパラ再読して、最近僕が落合陽一さんにハマっているのは、落合さんがいろんな面で第3の案を志向しているように思え、その視点がすごく面白いからだと思いました。
また、精神科医の樺沢紫苑さんや、投資家の藤野英人さんは、いったん予断を排して知識や情報を素直に受け入れる「ニュートラル思考」が大切だと言われています。これも、今の自分の考え(第1案)に固執していると、いろいろな知識や視点(第2案)を取り入れて組み合わせ、新たな視点(第3案)を得ることができないからなのかなと思います。
最後に、すこし長いですが、この本の書き出しが良かったので紹介したいと思います。
「人生は問題に満ちている。解決できそうにない問題。個人的な問題。家族の問題。職場の問題。隣近所の問題。世界全体の問題。
結婚したばかりの頃は幸福だった夫婦が、いまはかろうじていっしょにいるだけかもしれない。両親、兄弟姉妹、あるいはわが子と疎遠になっている人がいるかもしれない。職場で常に効率性を求められるあまり、あなたは追い詰められ、精神のバランスを崩してはいないだろうか。ひょっとしたら、多くの人たちと同じように、何から何まですぐ訴訟沙汰になる社会に疲れ果て、気力が萎えているかもしれない。私たちは犯罪をおそれ、それが社会に及ぼす影響を危惧しているが、政治家たちがどう取り組んでも一向に改善しないと思える。夜ニュースを見れば、いつか争いがなくなる希望など持てなくなってしまう。
こうして私たちは諦め、あるいは釈然としない妥協に甘んじている。
私がこの本をどうしても書きたかったのはそのためである。
根本的な原則をテーマにした本書は、あなたの人生を、そして世界全体を変えられる一冊であると私は信じている。真に効果的な人生を送る人々を調べ、その結果到達した最も重要な洞察が本書である。
本書は基本的に、人生において最も難しい問題を解決する鍵となるものだ。
すべての人が困難を抱え、黙々と耐えている。ほとんどの兵士は、問題に直面しても、より良い未来を願い勇敢に行動している。多くの人にとって、恐怖は人生の表面すれすれのところにある。身体的な恐怖もあれば、心理的な恐怖もあるだろう。しかしどんな恐怖も現実なのである。
本書で紹介する原則を理解し、それに従って生きれば、いま現在抱えている問題を克服できるだけでなく、これまで想像もしなかった未来を自分の力で築いていくことができるだろう。なにも私がこの原則を発見したのではない。それは不朽の原理である。しかし直面している問題にこの原則を当てはめ、実践した人にとっては、それは人生最大の発見になると言っても過言ではない。」