【本】尾原和啓著『どこでも誰とでも働ける』

尾原和啓さんの『どこでも誰とでも働ける』という本は、多くの気づきが得られるホームラン本でした!

一生の間に何度も転職することが一般的になる人生100年時代を生きる世代にとって、すごく参考になる本だと思います。

「自分に何ができて何ができないのかコンフェスする」「ギブの精神で働く」「まずはボランティアで経験を積む」「自分の”好き”を貫く」など、本書に書かれていることを実践していきたいと思います。

どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール

以下、よかったところを抜粋して紹介します。

★本書のタイトル「どこでも誰とでも働ける」には、2つの意味があります。1つは、どんな職場で働いたとしても、周囲から評価される人材になるということ。そしてもう1つは、世界中のどこでも、好きな場所にいながら、気の合う人と巡り会って働けるということです。現実味のない話に聞こえるでしょうか。しかし、「どこでも誰とでも働ける」ことを目指すのは決して「理想論」ではなく、激動する時代をサバイブするための、もっとも「現実的」な方法なのだ、というのが本書の大きなメッセージです。

★プロフェッショナルの語源は、自分が何者であるか、何ができて何ができないかを、自分の責任で「プロフェス(公言)」することです。自分で自分を律して成果を出し、それを相手にしっかり説明して、相手がそれを評価してくれること。この3つをおこなうことができれば、どんな職種であれ「プロ」と名乗ることができます。そして、ネットで自分の考え方ややったことをプロフェスしていくと、信頼がたまっていきます。そのようにして信頼される「プロ」になれば、「どこでも誰とでも」働くことができるのです。

★ぼくは、「ギブ&テイク」ではなく、さらに一歩進めて、「ギブギブギブギブギブ&ギブ」でちょうどいいと思っています。見返りを求めることなく、自分のもっているスキルを惜しげもなく提供することで、新しい経験を仕入れることができるからです。新しく仕入れた経験からさらに別の価値を提供して、次の経験につなげていく。ギブし続ければ、どんどん自分のスキルや経験値が上がります。自分からギブすることは、いつの時代も最強の戦略であり続けるでしょう。

★もしあなたが新しい職場に馴染みにくいと感じるとしたら、それは自分で勝手に「壁」をつくっているだけではないでしょうか。その「壁」を壊すのは簡単です。ひたすら相手のためになることをギブし続けること。これさえできれば、本当に「どこでも誰とでも」働けます。

★ぼくは仕事上の自分ルールをいくつもつくり、それを死に物狂いで守ろうとしています。「自分がいただいた給料の10倍以上の利益を返して、はじめてスタート地点」「新しい職場では、まず誰もが手をつけたがらない汚れ仕事を黙々とやり、汚れを剥ぎ取ることで成果を出す」「上の人には認められていないが、実は価値を出されている方々を見いだし、彼らの言葉を引き出して、上に通じるように彼らの価値を翻訳、接続する」などなど。これは、マッキンゼー時代に叩きこまれたプロフェッショナルの考え方に根ざしているのです。

★ぼくがいまの時代に合わせてプロフェッショナルの条件を付け加えるなら、自分の名前で生きる勇気をもつ、ということです。会社に依存しすぎず自由になるということは、(実際に転職するかどうかにかかわらず)いまいる会社のブランドや肩書に頼って仕事ができる環境をどこかで手放し、自分の名前で生きていく覚悟をするということです。自分の名前で生きていこうとすれば、自然と、「自分とは何者か」「何ができて、何ができないのか」をプロフェス(公言)することになります。その繰り返しが、自分で自分を律するプロフェッショナルへとつながるのです。

★会社にしろ、お客様にしろ、取引先にしろ、1つだけに依存すると、人間は自由を失います。だから、いまいる会社、いま取引のある会社、いま取り組んでいるプロジェクトから一歩離れて、別のところで自分の客観的な価値を確認する。会社と適切な距離を保って、自分の立ち位置を俯瞰してみる。普段から意識してそういうことをしておけば、1つのことに縛られることなく、精神の自由を保てます。

★ぼくが毎年転職活動をしているのは、現在の自分の市場価値を確認するためだけではありません。自分がこの先目指すべき分野、将来価値が高まりそうな分野を見極めるためでもあります。相手の会社がこちらの能力をいくらで買いたいかを提示するのと同じように、こちらも会社が3年後に成長するかどうかを冷静に見極める。お互いに相手の儲ける力をガチで評価して手を組むかどうかを決めるのが、転職活動という場です。そうやって、自分が次に行くべき道を見極めていった結果が、あとから振り返ると、自分のキャリアパスになっているわけです。

★会社という枠から一歩外に出たところで、自分にもこんな価値があるのだと実感することです。それに気づくと、会社に対する依存心がなくなります。「いまの会社を辞めたら仕事ができない」という思いこみもなくなるし、会社といい距離感で対等につきあうことができるのです。「いつでも辞められる」と思えば、会社でも、周囲の顔色ばかりうかがうのではなく、自分の思ったことを大胆に主張できるようになります。逆説的ですが、いまいる会社で最高のパフォーマンスを発揮するためには、「いざとなったらいつでも辞める」という覚悟が必要なのです。会社にしがみついている人には、本気で会社を変えることはできません。いまの職場を変えられるのは、「辞める覚悟」をもって「辞めずに取り組む」人なのです。

★自分の価値を会社の外で確認するという意味で、最近注目されているのがボランティア活動です。いまは個人が自分の本業のスキルを生かしてボランティアで社会貢献をする「プロボノ」が盛んになっています。プロボノプロジェクトに参加すると、自分がもっているスキルが「実は、こんなことにも役立つんだ」という発見につながります。だから、あえて転職活動をしなくても、社外でそういうプログラム型のボランティアコミュニティに参加するだけで、自分の価値を「見える化」できるのです。

★多種多様なバックグラウンドをもつ人たちが集まり、目的を共有して、それに向かって自分が得意な部分をもち寄り、支えあいながら、みんなでゴールを目指す。誰かのためにしていることですが、それによって自分自身も大きく成長できるわけです。これをぼくは「自己中心的利他」と呼んでいます。「利他」であっても、自分を犠牲にした「滅私奉公」ではありません。他人の成長を通じて、自分自身も勇気や元気をもらうことができます。なにより、普段だったら会えないような〝すごい人〟たちと同じチームで、同じ目的に向かって全力を尽くすことができ、自分自身も成長できます。だから、あくまで自己中心的な利他なのです。

★いまはSNSを通じて、他者からの評価が「見える化」され、個人のレピュテーションがネット上にどんどん蓄積されていく時代なので、余計に辞めた会社との関係を良好なものに保っておく必要があります。

★同じことは会社側にも当てはまります。会社の評判も、ネットで検索すれば、一目瞭然の時代です。だからこそ、「辞めた人間はもう二度とうちの敷居をまたぐな」という会社が少なくないのは、すごくもったいないことだと思っています。

★すでに自社のやり方を知っていて、他社のやり方や知識を身につけてひと回り成長した人間が戻ってきたら、即戦力以上の働きが期待できると考えるほうが自然です。むしろ、わざわざ出戻ってきたということは、その会社のことが好きなだけでなく、さらによくしようと、外で学んだ新しいやり方、もっと効率的な仕組みをもち帰ってくれることが期待できるだけに、それを活用しない手はないはずです。それだけではありません。出戻り組にもやさしい会社、という評判が立つだけでも、採用面でメリットがあるのではないでしょうか。

★ぼくは「業界の屯田兵」と呼ばれています。どういうことかというと、まだあまり人が足を踏み入れていない未開拓なところに喜んで飛んでいって、そのおもしろさを真っ先に体感して、みんなに「おいでおいで」と言うわけです。それで、他の人が興味をもってやってくると、自分は「もう飽きた」と次の未開拓な土地を目指す。それをずっとやり続けています。

★自分の強みをつくったり、自分を成長させたりするときに、いちばん簡単なのは、何かが始まる場所にいることです。

★人間の成長は「刺激×フィードバック」で決まるというのが、ぼくが人生で大事にしている方程式の 1つです。同じ環境の中でいろいろ試してみて、そのやり方を自分なりに分析したり、他人からフィードバックをもらったりしながら成長するというのも、もちろんアリですが、従来とは違う環境に思い切って飛びこめば、新たな刺激を受けて一気に成長することができます。なかでも、いちばん手っ取り早いのは、業界がこれから大きく成長する「始まりの場所」にいることです。

★「始まりの場所」にいることの大切さを、ぼくはよく風船にたとえます。業界がまだ小さいときや技術の黎明期は、全体のサイズが小さいから、風船の周囲をぐるりと一周することができます。関係者がみんな見える範囲にいるので、一緒に業界を盛り上げていく同志のようなつながりもできるし、360度どの方向を見ても、誰が何をやっているか、だいたいわかるという状況になりやすいのです。ところが、ビジネスが順調に立ち上がり、風船がどんどん膨らんでくると、風船の裏側で誰が何をやっているかは見えないし、全部わかるようになりたいと思って一周回ろうとすると、それだけで1年かかります。最初からそこにいる人は、風船が大きく膨らんでも、どこで何がおこなわれているか、だいたい全部わかったまま成長できます。これができるのは、最初からそこにいた人だけです。だから、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズはずっと偉大なままでいられたのです。

★「ライフワーク」だけで食べていけないのであれば、自分の時間の何割を「ライスワーク(食べるための仕事)」に割いて、何割を「ライフワーク(生きがいとしての仕事)」のために使うのかというポートフォリオマネジメントが大事になってきます。

★自分の〝好き〟を貫いて、他人と違うことをとことん追求すれば、それは「あなただけの個性」になります。それこそ、あなたがAI以降の時代にすべき仕事なのです。

★効率化の先に、AIやロボットが人間に代わって仕事をするようになるというと、人間性が損なわれると感じる人が多いようですが、ぼくは逆だと思っています。テクノロジーが代替するのは、本来人間がやらなくてもいいようなルーティンワークです。毎日決まりきった作業を延々とやるような〝面倒くさい〟仕事は機械に任せて、空いた時間に、自分の好きなこと、やりたいことを掘り下げる。そうやって個性を磨いていくと、それ自体が仕事になる可能性が、いま以上に高いということです。