本に3種類、すなわちホームラン本(心が動かされ、思考や行動が大きく変わる本)、ヒット本(良い本、参考になる本)、三振本(その名の通り)があるとすると、『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦①ブランド人になれ!』は、間違いなくホームラン本でした。
(この譬えは精神科医の樺沢紫苑さんが使っているものです。樺沢さんは、ヒット本を50冊読むより、ホームラン本を5冊読むほうが成長すると言います。)
本書は経営コンサルタントのトム・ピーターズさんが、読者が「ひとめで違いがわかるもの、お客さんの期待を裏切らないもの、人の心を癒すもの、グッとくるもの」である「ブランド人」になるための50項目のアドバイスを記したものです。
著者も魅力的ですが、翻訳者の言葉選びも秀逸で面白く、めちゃくちゃ楽しく読める本でした。
会社という組織の陰に隠れるのではなく、一人のブランド人として、いかにお客さんに価値を提供していくのか。自分の働き方を振り返るきっかけが満載でした。
トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ!
以下、良かったところを抜粋して紹介したいと思います。
★ブランド人の共通点
・自分で自分を改造する。
・一貫性などにとらわれず、つねに変わっていく。
・満身創痍である。人生というゲームを堂々と戦い抜こうと思えば、あちこちに傷を負うことは避けられない。ときには深傷を負って悶絶する。
・好奇心が旺盛(はた迷惑なほど)。
・子供のように純真。どんなことでも、四歳の子供のように、探求をやめない。
・過ぎたことをくよくよしない。
・何が起こるかわからない人生を楽しんでいる。
・明るい。じつによく笑う。
・向こう見ず(まわりがひやひやするほど)。
・偶像破壊者。常識に逆らっているときしか、幸せを感じない。
・人間くさい。長所もすごいが、欠点もすごい。
・正直で、そして矛盾している(ほんとうに正直な人がみな、そうであるように)。
・枠におさまらない。与えられるキャンバスは小さくても、筆致は大胆にして華麗。筆はいつも勢いあまって、キャンバスからはみだす。人生のサーカスを恐れない。はらはらどきどきしながら生きていきたいと思っている。
★さらに、ブランド人の描写
・その人は、仕事に身も心も奪われている。
・取り組んでいるのは、鳥肌が立つようなプロジェクト。
・それは、大事な大事な仕事。
・それは、しびれるほどカッコいい仕事。
・それは、ため息が出るほどキレイ。
・その人は、怖いもの知らず。すごい迫力で仕事をやるから、お偉いさんはびびってしまう(びびらなくても、気押される)。
・その人は、冒険家である。見ようによっては、海賊にも見える。
・その人は、自分の人生のCEOである(たとえ、会社に勤めていても)。
・その人は、ちょっとオカシナところがある。
・その人は、刺激が大好き。好奇心は無尽蔵。
・その人は、よく笑う。
・その人にとって、大失敗は、息をするのと同じくらい当たり前のこと。
・その人は、自分の腕に絶対の自信をもっていて、日々、腕を磨くことを怠らない。
・その人は、超過激な連中と付き合っている。
・その人は、出世につながる仕事より、新しいことを学べる仕事を選ぶ(寝ても覚めても、リニューアルが頭から離れない)。
・その人は、神でもなければ超人でもない。
・その人は、誰にもできないことをやってやろうと燃えている!
★朝、出社して机の前にすわったら、まず自分にこう言い聞かせよう。
「私はたしかに、この会社で働いているが、私はフリーエージェントで、ここには助っ人に来ているにすぎない。そして、その期限を決めるのは、ほかの誰でもない、この私だ」
私が勤めている会社ではない。私が会社だ!
★この次、つまらない仕事、ちっぽけな仕事が出てきたら、勇んでそれに飛びつこう。そして、それを感動の仕事に変えてしまおう。
★ブランド人=抜群=実行=鬼神のごとき一点集中
ブランド人になるためにまったく役に立たないものを、一つ一つ切り捨てていこう。当面の目標は、二点か三点まで絞り込むことだ。
その目標を達成したら、細心の注意をして、さらにハサミを入れる。最終目標は「一点」だ。これは苦しい作業になるが、苦しむだけの価値はある。一点に集中しなければ衆に抜きんでることはできないし、それになにより、もてる力のすべてを振り絞って、ただひとつのことに打ち込むことほど、人生の愉悦はない。
★お客さんの苦情をむさぼり食おう。お客さんの苦情ほど、栄養になるもの、自分の血となり肉となるものはない。
ブランド人は、お客さんの話をよく聞く。
ブランド人は、お客さんをいたわる。
ブランド人は、お客さんを助ける。
プロのサービスは、ひとの悩みを聞き、ひとを助け、苦しみを分かち合うのが商売だ。私たちはみんな、特殊技能をもっている(そうでなきゃ、そもそも技能を磨く必要はない)。しかし、人間らしい心をもたなければ、お客さんと心が通い合わなければ、どんな特殊技能も児戯に劣る。このことを考えてみよう。
★ありがたいことに、私の経験からいうと、お偉方の中にはかならず何人かの「裏切り者」がいる。あなたが彼らを必要としているように、彼らもあなたを必要としている。彼らは、あなたの元気がうらやましい。あなたの元気を吸い取って、若返りたいと思っている。暴走する若いモンの兄貴分になって、過ぎし日の情熱を取り戻したいと思っている。だから、お偉いさんの中に隠れている「裏切り者」をスカウトしよう。
★ブランド人を目指すなら、現場に向かって走れ!
現場の人の話をよく聞こう。現場の人から学ぼう。現場と太いパイプを築き、「現場大学」を創設すれば、あなたの成功は間違いない。それほど単純な話なのだ。
★私は毎日、自分の殻を破ろうと必死になっている。自分の知らないこと、自分が読んでいない本、自分とは違う人類に思える人、未知の世界に自分を引っ張り出してくれる人、自分の信念のいくつかを揺さぶってくれる人に出会うと、私はわけもなくコーフンする。
私が何よりも恐れているのは、澱んで腐ることだ。それを避ける方法はひとつしかない。私の頭を攪拌してくれるもの(すなわち変わり者)に、絶えずわが身をさらすしかない。