ポジティブ心理学の第一人者、ショーン・エイカーさんによる『幸福優位7つの法則』は、多くの気づきが得られるホームラン本でした。
この本に流れるコンセプトは、「人は幸せでポジティブな気分のときに成功する(成功して幸せになるのではない)」ということです。
そして気分をポジティブにする方法として、
「今日起こった3つのよいことを書く」
「運動する」
「人と共有する経験にお金を使う」
「楽しみになる予定を入れる」
「天気のよい日に外へ出る」
「ネガティブな情報をシャットアウトする」
「好きなことに夢中になる時間を持つ」
など、研究成果をもとにした具体的なアドバイスがたくさんありました。
いろいろ実践してみましたが、特に良かったのは「人と共有する経験にお金を使う」というところです。ここ1年ほど、映画鑑賞や美術鑑賞、旅行などを人と共有していますが、それらの経験は振り返る度に楽しい気分にさせてくれ、ポジティブな気分で仕事に取り組むことができています。
この本は何度も読み返しながら、実践を通して内容を自分の血肉にしていきたいと思える本です。
幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論
以下、良かったところを紹介したいと思います。
★人間の脳は、普通の気分のときでもネガティブな気分のときでもなく、ポジティブな気分のときに最もよく働くようにできている、ということが証明されている。
★『今日起こった3つのよいこと』を書き出そうとすると、脳は1日のできごとを振り返り、ポジティブと思えることを探し始める。ちょっとおかしかったこと、大笑いしたこと、仕事で達成感を得られたこと、家族との絆が強まったこと、未来への希望がきざしたことなどを思い返す。1日にたった5分間これをすることで、脳が自分の個人的および職業的な成長の可能性に気づき、それに働きかける機会を見つけることができるようになる。また人は、一度に注目できる範囲に限界があるので、ポジティブなことを考えると、それまで頭を占めていた他の小さな心配やイライラは背後に追いやられるか、意識の外に押し出されてしまう。
★ある研究によると、1週間毎日『3つのよいこと』を書き出した人たちは、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後の追跡調査でも、それをしなかった人たちよりも、幸福度が高く、落ち込む回数が少なかった。驚いたのは、エクササイズを止めた後も、幸福度、楽観性ともに高い状態が続くということだ。身の回りのよいことをスキャンするのが上手になるにつれ、特に努力しなくても、どこを見てもよいことが見出せるようになるのである。(中略)今の仕事の意義や目的がはっきり見えてくるので、仕事を天職と考えられるようになる。さらに、部下に仕事の指示を出すときにも、気持ちのこもった肯定的な言い方をするようになるので、部下の創造性や問題解決の力を高めることにつながる。そして自分自身は幸福度が上がり、脳はいままでになくよい状態で機能するようになる。
★この練習は、他の人を巻き込むほど効果が倍増する。(中略)私はビジネスリーダーたちに、このエクササイズを、就寝前や朝食時に奥さん(あるいはご主人)と一緒にやることを勧めるが、それも同じ理由である。周囲のできごとからポジティブなことを拾い上げるのが上手になってくると、結婚相手に対しても感謝するべきことがたくさん見えてくるのがうれしいおまけである。
★ポジティブな感情を持つ機会を多く見出すほど、私たちは感謝の気持ちを覚える。感謝を常に忘れない人たちは、より活発で、EQ(心の知能指数)が高く、寛容で、抑うつ的になりにくく、不安や孤独も感じにくいということを、他の数多くの研究が証明している。
★楽観主義者は悲観主義者に比べて、より多くの、そしてより困難な目標を立てる。そしてその目標を達成するために多くの努力を注ぎ込み、困難に長時間立ち向かうので、障害を比較的簡単に乗り越えるということが実証されている。
★運動をすると、快楽をもたらすエンドルフィンという化学物質が放出されるということを聞いたことがあると思う。だが運動の恩恵はそれだけではない。身体的活動は、モチベーションを上げ、自己統制感を増し、ストレスや不安を減らし、「フロー」の状態を生じさせる(「フロー」というのは、人が最も生産的になっているときの「完全に没頭した状態」のこと)。そのために、気分がよくなり、仕事の能率が上がるのである。
★モノを買ったときに得られるポジティブ感情は、腹立たしいほど短時間で消失するのに対し、経験、特に他の人と共有する経験にお金を使った場合は、価値のあるポジティブ感情が長続きする。
★ある研究によると、お気に入りの映画を見ることを想像しただけで、脳内のエンドルフィンのレベルが27パーセント上がるという。何かの活動の一番楽しい部分は、多くの場合それを楽しみに待っている時間である。
★天気のよい日に外へ出ることも、非常に効果が高い。ある研究によれば、いい天気の日に20分間外で過ごすと、ポジティブな気分が高まるだけでなく、思考の幅が広がり、作業記憶が改善されるという。賢明な上司は、社員に少なくとも1日に1回は戸外の新鮮な空気を吸わせるようにしている。
★ネガティブな内容のテレビ、特に暴力的な番組を見ないようにすると、幸福度が高まるという研究結果もある。これは、現実世界から自分を切り離すということではないし、現実の問題を見て見ないふりをするということでもない。心理学者によれば、テレビを見る時間が少ない人は、犯罪や悲劇や人の死が報道されることの多い夜10時のニュースを毎晩見ている人に比べ、我々の暮らしがどれくらい危険でどれくらいよいことが起きるかという判断を、より正確にできるという。センセーショナルで情報源の偏った報道に接することが少ないので、現実を明確に認識できるのである。
★好きなことに夢中になる時間を持つことが、かえって仕事の生産性を高める。仕事だけをひたすらやり続けるというのは、決してよい結果につながらない。
★業績や仕事に対する満足感を高めるのに、人とのかかわりは必ずしも深いものでなくてもいい。組織心理学の研究によれば、たとえ短時間のふれ合いでも「上質のつながり」になりうるという。
★最近のある興味深い研究によれば、困難な時期よりも、好調な時期にどれだけ人を支えたかが、人間関係の質に影響するというのである。よいニュースを誰かと共有することは「資本化(キャピタライゼーション)」と呼ばれる。よいできごとを人と共有すると、そのできごとの恩恵が何倍にもなり、共有した相手との絆が強まることが分かっている。
★人間関係に対する投資を真剣に考えるリーダーは、文字通りよく動きまわる。職場においてより多くのつながりを作る最良の方法は、デスクを離れることである。『Managing By Walking Around(歩きまわるマネジメント)』というアイデアは、1980年代にリーダーシップのエキスパート、トム・ピーターズが、ヒューレット・パッカード社のリーダーたちから学んで、世に広めたものだ(重要性を強調するために彼は『MBWA』という頭文字まで作った)。マネジャーはMBWAによって、社員をよく知ることができ、よい知らせや成功事例を伝えたり、心配事を聞いたり、解決策をさずけたり、励ましを与えたりできる。
★信頼関係を築いて、影響を及ぼすための一つの方法は「アイコンタクト(目を合わせること)」である。お互いの目をしっかり見合ったとき、二人の間の信頼関係は強化されるという研究結果がある。
★ポジティブ感情の感染力は、リーダーの立場にあれば何倍にもなる。研究によれば、リーダーがポジティブなムードであれば、部下もポジティブになりやすい。そうすると協調的に助け合うようになるので、より少ない努力で効果的に仕事を成し遂げることができる。
★「幸福優位性」を活用することは、自分自身が幸福や成功を得るだけでなく、それよりはるかに重要なことをしていることになる。(中略)自分に変化を起こすことによって、「幸福優位性」の恩恵を、チームや組織全体、周りにいるすべての人に届けることができる。