【感想】樺沢紫苑著『精神科医が見つけた3つの幸福』

『精神科医が見つけた3つの幸福』という本を読みました。

精神科医である著者の樺沢紫苑さんは「精神疾患になる人を減らす」とのビジョンを掲げ、多くの著作をはじめ、YouTube・Facebook・TwitterなどのSNSで情報発信を続けています。

本書は「幸福とは何か?」という、古来より多くの哲学者が論じてきた問いについて、脳科学の知見をもとに明快な答えを提示しています。それは「幸福とは、脳内でセロトニン、オキシトシン、ドーパミンという3つの神経伝達物質がバランスよく分泌されている状態である」ということです。身も蓋もない話ですが、シンプルな結論で面白いですね。

この記事では、まずセロトニン、オキシトシン、ドーパミンについて簡単に説明したあと、3つの幸福物質の優先順位、そして僕が本書から得た気づき2つを紹介したいと思います。

セロトニン

セロトニンとは、リラックスした穏やかな気持ちの時に分泌される脳内物質です。晴れた日の朝、外を散歩して日光を浴びながら「気持ちいいな」と感じる時、脳内ではセロトニンが分泌されています。セロトニンは脳内の指揮者とも言われ、心身の健康にとって不可欠な脳内物質です。セロトニンを分泌させるには、睡眠・食事・運動など、生活を整えることが大切です。

オキシトシン

オキシトシンは「繋がり」の脳内物質と言われます。人との温かなコミュニケーションや、ペットとの触れあいなどで分泌されます。愛情の脳内物質であり、安心感をもたらします。

ドーパミン

ドーパミンは快楽物質であり、「楽しい!」と思う時や、達成感を感じた時、目標を定めた時などに分泌されます。集中力を高める効果があり、仕事や勉強などのモチベーションの源になります。一方でドーパミンには危険な側面もあり、依存症の原因となる脳内物質でもあります。

3つの幸福物質の優先順位

これら3つの幸福に関する主な脳内物質には、追い求める優先順位があると著者は指摘しています。まず1番目に心身の健康にとって大切なセロトニン、2番目に人との親密な繋がりによるオキシトシン、最後に勉強や仕事などの成功をもたらすドーパミンです。

著者は精神科医としての研究のためアメリカに留学していました。留学による最大の気づきは「自分を大切にし、家族を大切にした上で、仕事を頑張る」というアメリカ人のライフスタイルに触れたことだったようです。

アメリカでは定時になると皆すぐ帰宅するそうです。自分の心身の健康(=セロトニン的幸福)を大切にし、家族とゆっくり過ごす時間(=オキシトシン的幸福)を大切にし、その上で短時間でバリバリ働く(=ドーパミン的幸福)。

労働時間が他国と比べて長い日本にとって参考になる話ですね。自分の健康や家族との時間を犠牲にしてまで働くと、幸福の土台が崩れてしまいます。

以上が大筋の内容ですが、本書にはセロトニン・オキシトシン・ドーパミンを分泌させる具体的なTO DOが多く記載されています。

気づき1:自然の中で過ごすことの効果

僕にとって1番の気づきは、「家族と自然の中で過ごすことは、3つの幸福すべてをもたらす」ということです。例えば週末に家族で尾瀬に出かけたとします。このとき、自然の中でリラックスすることでセロトニンが分泌され、経験を共有することで家族の絆が深まりオキシトシンが分泌されます。また、新しい土地を訪れワクワクすることでドーパミンも分泌されます。これからも自然の中で過ごす旅行の機会を大切にしたいと思います。

気づき2:制限することの効果

2つ目の気づきは、「制限する」ことの大切さです。セロトニン、オキシトシンによる幸福感は逓減しないけれど、ドーパミンの幸福感は逓減します。つまり、ドーパミンの幸福感は時間とともに減り、同じ経験では満足しなくなります。お酒を飲むことや、お金を得ることがもたらす喜びなどは、初めは嬉しくても、時間がたつと同じ量では満足しなくなり、「もっともっと」と追い求めてしまう。その結果、依存症になってしまいます。

この問題の解決策は、ドーパミン的な楽しみを制限することです。お酒を飲む回数を制限すると、依存症にならずに済むとともに、特別な機会に飲むお酒がとても美味しく感じられます。

どんな人にオススメするか

僕は樺沢紫苑さんのオンラインサロンで学んでいたこともあり、著書もほとんどすべて読んでいますが、本書はこれまでの著作の集大成という気がします。「すでに十分幸せ」という方にとっても、「なんだかもやもや悩んでいる」という方にとっても、多くの学びがある一冊だと思います。