【本】中野善壽著『ぜんぶ、すてれば』

寺田倉庫という会社のCEOとして、同社が拠点とする天王洲アイルを、アートと文化の街に変えた中野善壽さん。

先月発刊された初の著書『ぜんぶ、すてれば』を読んだのですが、75歳とは思えない若々しさで、過去でも未来でもなく「今を生きる」を実践されてきた生き方に魅了されました。

伊勢丹からキャリアを始め、台湾の財閥で働いた後、寺田倉庫の経営を引き継いだ中野さん。もともと過去の実績をひけらかしたくないため本を書く気はなかったけれど、30歳の若き編集者から提案されたタイトル『ぜんぶ、すてれば』が気に入り、執筆の企画を受けたという話が紹介されていて好感を持ちました。

モノや常識や過去に執着せず、まっさらな気持ちで今を楽しみながら生きる、そのヒントがたくさん詰まっている本でした。

以下、とくに心に残ったところを紹介したいと思います。

★僕が何より伝えたいのは、「今日がすべて」という言葉です。
情報が多く、将来のことも、周りの人も気になる時代において、
「今に集中する」のはどんどん難しくなっているのかもしれません。
しかし、事実として、夢中になって楽しむことができるのは今しかありません。
今この瞬間、ここにいる自分をもう一度見つめてみる。
過去にとらわれず、未来に揺さぶられず、
確かに味わうことができる今日に集中して精一杯楽しむ。
その結果は、先々にいろんな形となって巡って来るはずです。

★始める勇気と同じくらい、大事なのは"やめる勇気"。
(中略)
不自然な力みが生じたり、「どこか自分らしくないな」と感じたとしたら、
そろそろやめる時期だと思ったほうがいい。
やめる時に最大の邪魔者になるのは、過去の自分です。

★そもそも僕たち人間が生かされている自然世界そのものが、
常に流れ、変化をし続けているのであって、今日と明日で一つとして同じものはない。
一日単位では気づきにくい微々たる変化だったとしても、
大きな流れの中では激動している。

そんな世界の中で必要になるのは、安定を求める心ではなく、変化に対応する力。
冷たい風を一瞬感じて立ち止まる力。
そして、足先の方向をクルッと変えて、また颯爽と歩き出す力。

★付き合いを続けたいのは、明るく未来を語れる仲間。
愚痴や不満を言っているばかりの人とは、自然と疎遠になります。

付き合いは長いほどいいというものでもなく、
会ったばかりの相手から新鮮な学びを得ることもしばしば。
来るもの拒まず、去るものは追わず。
いつでもオープンに、社交の扉を開けるようにしています。

ぜんぶ、すてれば