【感想】藤原和博著『本を読む人だけが手にするもの』

教育改革実践家・藤原和博さんの『本を読む人だけが手にするもの』という本を読んで、心に残ったことを3つシェアしたいと思います。

①読書とは「著者の脳のかけらを自分の脳につなげること」

本を読むことは「著者の脳のかけらを自分の脳につなげること」であり、読書によってさまざまな脳との交流が可能になり、自分の世界観が拡張されると、藤原さんは言います。

藤原さんは、20世紀を情報処理力が求められる成長社会、21世紀を情報編集力が求められる成熟社会と定義しています。

これからの時代では、正解を求める情報処理力ではなく、自分と他者が納得できる納得解を見いだす力=情報編集力が必要になります。

この情報編集力を鍛えるのが読書であると藤原さんは言います。読書を通してさまざまな著者の脳のかけらを自分の脳(自分の経験や価値観)とつなぎあわせ、自分なりの世界観を形作っていくことで、情報編集力が培われていきます。

そして、脳にはフックのようなものがあり、読書を続けていくことでフックが増え、以前では理解できなかった新たな知識を、どんどん脳に繋げていくことができると言います。

たとえば、いきなり著者Aの本を読んでも理解できなかったけれど、著者Bの本を読んだあとなら、著者Aの本がすっと頭に入ってくるということがあります。これは、脳のフックが増えたからです。

これは僕にも経験があるので、よくわかります。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を初めて読んだ時、その洞察の凄さをあまり理解できませんでしたが、ハラリが毎年参加しているヴィパッサナー瞑想コースにインド旅行中に参加し、『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門』という本を読んだあとでは、ハラリが書いた本の理解度が上がりました。

自分の経験や知識が、脳の中のフックになっていて、それにガチッと合う本に出合うと面白く感じ、理解できるのだと思います。

②旅行が情報編集力を鍛える

藤原さんは本書の中で、読書以外で情報編集力を鍛える方法についても書いています。

子どもにとっては、遊びが情報編集力を鍛えます。たとえば小さな広場で草野球をする場合、場所が狭いので2塁は省いて、ホームベース、1塁、3塁だけにする、というように、自分たちでルールを編集して楽しみます。このように遊びは情報編集力を鍛えます。

そして大人にとっては、旅が情報編集力を鍛える機会になると言います。それも、決められた観光地を巡るお仕着せのパックツアーではなく、スケジュールや宿泊先、交通手段などをすべて自分で組み立てる「旅」にすることが大切です。

僕は16カ国を巡った世界一周旅行、28都道府県を訪れた日本周遊旅行では、旅のすべてを、奥さんと一緒に組み立てることに喜びを感じていたので、この藤原さんの「旅が情報編集力を鍛える」との記述が嬉しく感じました。笑

③読書熱を高める仕組み作り

藤原さんは民間出身の校長として、東京都の和田中学校や奈良県の一条高校で教育改革を実践されてきました。

そんな藤原さんが、生徒に読書させるために仕掛けた仕組みがめっちゃ参考になりました。

まず、和田中学校では、図書室の本9000冊のうち、あまり魅力的ではない本5000冊を捨て、余裕ができたスペースに本を面だしで配置したり、寝そべって読書できるスペースを作ったりした結果、利用者数が劇的に増えたそうです。

また、近くに住む本好きのお母さんたちを学校の図書室にお呼びして読書してもらい、本好きのオーラ(波動)を子どもたちに伝染させたそうです。

僕は大学で職員として働いているので、図書館の仕組みを改善する参考になる話ばかりでした。

ただ、まずは自分の家の本棚に、藤原さんの話を応用しました。

家にはIKEAのビリーというでっかい本棚があるのですが、その中には数年手に取っていない本がたくさんありました。今回、思い切って数十冊手放しました。何度も読み返したいと思える本だけを残しました。

そして、今自分が興味があり、ワクワクする本を数冊購入して並べました。これによって今、久しぶりに読書欲が爆発しています。

以上、藤原和博さんの『本を読む人だけが手にするもの』を読んで心に残った点3つのご紹介でした。

それでは。